ヒトツバタゴ


予想を上回る美味しさに黙々と食べ進めていると、吹く風に乗って視界の端に舞う白い…




「雪…?」




まさかこんな季節に…と顔を上げると強く吹き抜けた風により一層舞い降り、視界を埋める白い雪に魅入る






「ヒトツバタゴ」






聞き慣れた心地良い声が後ろから届く




声の主は私の隣に座り続ける


「属名chionanthusはギリシャ語で『雪の花』って意味なんだって」




「これがナンジャモンジャ…」




「なんだ知ってるんだ。俺も初めて見た時はこの季節に雪?って思ったよ。本州の限られた地域にしかないから、地元では見られないしな。」




木の葉の上に咲く無数にある小さな花は木に積もる雪のようで、吹く風に深く四つに裂けた白い花が舞う様は降り始めの雪そのものだった











昼休憩後の決勝戦は真ん中のコートで行われるようで、他の2つは既にネットが片付けられていた




準備を始めた出場メンバー達と相変わらずコートの横のベンチに座らされている私



ボールが飛んでこないことを心の中で祈りながら試合が始まるのを眺める






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