ヒトツバタゴ


「そっそれだけは勘弁して」



コートの真ん中に立つネットに指をかけ顔を青くする大也





奥さんの杏さんは職業柄か女性を大切にする



その杏さんと仲の良い私を狙ってボールを打ったと報告されたら、しばらく夕飯は白米だけとかになりなりそうね





橘から送られてきたボールを拾い上げた早川さんが「酒井サーブ早くしろ」とネットに項垂れる大也に言い放つ









両チームが1セットずつ取り、最終セットも中盤に差し掛かった頃



大也がレシーブしたボールをセッターの早川さんがトスを上げずにそのまま両手でキャッチして止まった





…え?



ルールをよく知らない私でも知っている





ボールを持ってはいけない





体育館にいる全ての人が唖然とした





「悪ぃ、コンタクト落とした。」





主審をやっていた社員に「棄権するわ」と告げ持っていたボールを手渡す





呆然とする会場全体が体育館から出ていく早川さんを見送る







「ひゃあっ!ちょっ…橘さん!?」





しんと静まり返っていた体育館に吉倉さんの声が響き一同が注目すると、橘が彼女を抱きかかえていた



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