ヒトツバタゴ
いわゆるお姫様抱っこというやつにそこら中から悲鳴が上がる
「さつき、俺と吉倉さんの荷物もお願い」
そう言って、体育館の端にひっそりと構えられたレクリエーション本部へ向かって行った
本部へ行ったってことは吉倉さんが怪我でもしてるだろうことが予想できるのに、不謹慎にもモヤモヤとした感情でチリチリと痛む胸を押さえスタンド席へ三人分の荷物を取りに行く
閉会式のために私達の荷物も持って階段を下りてきていた安達くんから橘と吉倉さんと私の荷物を受け取って本部へ向かう
そこではパイプ椅子に座らされた吉倉さんの右足首に橘がテーピングを巻いていた
「吉倉さん大丈夫?」
荷物を持ったまま傍に寄る
「はい、ちょっと捻っちゃっただけで大丈夫です!」
困ったように笑顔を見せる可愛い後輩にまだ胸の奥はモヤモヤと渦巻いていて
情けないな…私
と心の中で呟く
「捻挫だろうけど、ちゃんと冷やさないと痛くてこの後の温泉に入れなくなるよ?」
手を止めることなく放たれた橘の言葉に「はい、すいません」と今度はションボリと項垂れる