ヒトツバタゴ


「早川さんはコンタクト見つかったんでしょうか…みんな下りて来ちゃって探せなかったんじゃ…」



項垂れていた頭を上げ体育館を見渡す吉倉さん





「早川さんはコンタクトはしてないはずだけど」




「「え?」」



吉倉さんと同時に橘を見る




でも確かに早川さんは「コンタクト落とした」と言っていた




「今までの旅行で同室になったこともあるけど、コンタクトを外したりつけたりしてるところなんて見たことないよ?」




「それに」と付け加えてテーピングが完了した吉倉さんの足に本部から準備された氷嚢を乗せてテープで固定していく




「棄権するわって言う前に俺に『そこの小さい奴の足なんとかしてやれ』って言ってたから、吉倉さんの捻挫に気付いて試合終わらせるために言ったんだろうね」




処置を終え橘が立ち上がった正面に座る吉倉さんの頬が赤く染まっていった





おやおや?





さっきまでモヤモヤとしていた胸の奥は今度は好奇心で溢れてきた





単純すぎる心の中を抑えながら閉会式に参加して、乗ってきたバスに乗り込み今日の宿泊先の旅館へ向かう




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