ヒトツバタゴ
〜もらった勇気と振り絞る勇気〜
旅館に着くと事前に割り振られた部屋の鍵を受け取り、仲居さんに案内されながらそれぞれ部屋に入っていく
自分の部屋を確認すべく事前に配布された資料から部屋割り表を取り出す
「河本さん」
部屋割り表と睨めっこをしていると名前を呼ばれ振り返ると吉野さんがいつもの微笑みで立っていた
「こちらの手違いで河本さんと吉倉さんの部屋が部屋割り表に載ってないんです。申し訳ございません」
そう言って頭を1度下げた吉野さんから「こちらの部屋をご利用ください」と鍵を差し出された
お礼を述べて鍵を受け取り、吉倉さんと共に仲居さんの案内の下、館内を歩く
先程睨めっこした部屋割り表では2階から4階の客室で3人から4人で一部屋という割り当てだったけれど、仲居さんとエレベーターを降りたのは最上階の5階だった
「あれ?他の人達とは違う階なんですね」
吉倉さんも疑問に思ったようで、そう口にする
「そうみたいね」と相槌を打ち仲居さんに続いて歩を進める
「5階は全室露天風呂付きなんですよ」
エレベーターから程近い部屋の引戸を開けながら仲居さんが笑顔で説明を入れ、「どうぞ」と中へ促す