ヒトツバタゴ


男性は白地に薄い緑の模様が入った浴衣のみだけど、女性は好きな浴衣を選ぶことができて、色とりどりの浴衣が宴会場を彩っていく



淡い黄色に小さな花が散りばめられた浴衣を着た吉倉さんと共に橘の隣へ並んで座る



ほとんどの人が浴衣を着ている中、私は浴衣では傷跡が見えるかもしれないと思ってお風呂の後に着るために余分に持ってきた私服だけど、橘まで私服ということにふと疑問も過ぎる




「橘お風呂入らなかったの?」




「入ったよ」




すぐに返ってきた言葉にまじまじと橘の服装を見つめる




「あぁ、浴衣?得意じゃないから私服でいいかと思って」




私の視線から察してそう言ったけど、離れた席から聞こえてくる「今年は浴衣じゃないのね、残念」という言葉






橘が本当に浴衣が苦手で私服にしたのか私に気を遣ってそうしたのか



真意はわからないけれど



周りが浴衣の中、私服が1人だけじゃないことにほんの少しだけ安心感で胸の奥がほっこりと温かくなる





時間になり全員に飲み物が行き渡ると営業部長の音頭で宴会が始まった




トークに花を咲かせる女性社員にお酌をついで回る男性社員






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