ヒトツバタゴ


食事もほとんど済み、宴もたけなわになってきた頃



お手洗いに席を立ち、用を済ませ会場へ戻ろうとすると途中の脇に逸れる通路から聞き覚えのある声がした




「早川さん、先程はありがとうございました」



聞こえた吉倉さんの声に、慌てて足を止め通路から見えない所へ隠れる




「別にあんたのためじゃねぇよ。コンタクト落としたんだって言ったろ?」



「いえ、橘さんから聞きました。早川さんはコンタクトじゃないって」



「…ちっあの野郎…それで?話はもう済んだよな。俺はもう部屋戻るから」



「あのっ…」



「なに?」



引き留める吉倉さんに苛立ちの声音の早川さん



きっと私の苦手なあの目で吉倉さんを見ているに違いない



「…景品の夢の国、一緒に行ってもらえませんか?」



は?


なぜそこで夢の国…



「は?気ぃ遣ってんならやめろよ?」



「そうじゃありません!」


早川さんの言葉をキッパリと否定する吉倉さん



「どういう意味かわかって言ってんの?」



「わかってます」



ペアで行く夢の国旅行…



一緒に行くのを誘うって…まさか…








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