ヒトツバタゴ


あ…




雪…




中庭の真ん中に聳え立つ大きなヒトツバタゴの木から夜風に乗って雪のように花びらが舞ってきた




見上げると葉の上に積もった白い花が灯篭のオレンジの灯を写している




「わぁ…綺麗…」




見上げたヒトツバタゴの奥に街の明かりに邪魔されずにゆらゆらと煌めく星達が夜空を彩っていた










「っくしゅん」



満天の星空に見入ってしまい、すっかりと冷えてしまった





部屋に戻ってもう一回お風呂で温まろう






歩いてきた砂利を再び小気味よく音を立てて館内へ戻り、宴会場へは戻らずにエレベーターへ乗り込んだ












懇親旅行二日目は定番の観光スポットを巡り、お土産を買って昼食を食べて会社へ帰る




観光してても、ご飯を食べてても、帰りのバスの中でも、思い出すのは昨夜の早川さんと吉倉さんのやり取りばかり






仕事の覚えも速く、いつも溌剌としていて愛嬌のある笑顔を振りまいてくれる吉倉さんだけど、好きな人を旅行に誘うのは相当の勇気がいるはず…



彼女が奮った勇気はどれくらい…?




隣の席でバスの振動にウトウトしている吉倉さんを見つめる



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