ヒトツバタゴ
「本当だよ」
背もたれの上から後ろを覗くと顔を顰めるさつき
管理部でのやり取りを説明すると深くため息を吐いた
「優勝しましょう!」
とヤル気を見せる吉倉さんに自分の分のお菓子を握らせている
中学高校でバレーボール部でセッターをやっていた吉倉さんは今までセッターをやる人間がいなくて俺がやっていた営業部1課にとってはまさに救世主
昨年までは適当に程よく遊んで、程々の所で負けていたけど、優勝するしかない今年はアタッカーとして専念させてもらうことにする
いつもの体育館で始まった開会式
景品の説明をしていた吉野さんと目が合った
「優勝チームの女性は橘くんと男性は河本さんと1日デートの権利が得られるという噂があるそうですが、橘くん、真偽の程はどうなんです?」
吉野さんから公に聞かれる程に噂は広まってたんだな…
さつきの肩を抱き笑顔でそれに答える
「もちろん喜んでお受けしますよ」
さつきは誰にも渡しませんけどねと心の中で付け加える
腕の中のさつきは呆れたようにため息を吐く
開会式が終わり、更衣室で着替えていると大也から声を掛けられた
「よっ橘!お前開会式であんなこと言って大丈夫なの?今までも優勝したことないんじゃ…」