ヒトツバタゴ


しばらくすると予想通り、私服のさつきと浴衣姿の吉倉さんが会場にやってきた



「さつきこっち」と場所を示すと真っ直ぐにこちらにやってきて、隣に座る




隣にいて然りだというのに、未だ手に入らないもどかしさを理性で抑え込むことにも慣れて久しい



もう俺のペースで手にすることもできると思う



でもそれでは今までさつきを襲おうとしてた奴らと変わらない



大切だからさつきのペースで



さつきの心が決まるまでは…







「橘お風呂入らなかったの?」



当然投げ掛けられる疑問



「入ったよ」と答えればまじまじと見つめられる



浴衣じゃないからってことはわかってるけど、そんなに見つめられると俺の我慢が水の泡になっちゃうよ?




「あぁ、浴衣?得意じゃないから私服でいいかと思って」




浴衣なんてどっちでもいい



さつきのためなら何だってやる







役員へのお酌で長時間捕まり、席に戻った時にはお膳の上には冷めてしまった料理が並び、さつきの姿はなかった





「さつきは?」



さつきの席の隣に座っていた吉倉さんに居場所を確認する





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