ヒトツバタゴ
会場から出たところで吉野さんが「大丈夫ですか?」と救いの手を差し伸べてくれた
「こいつの部屋がわからなくて、教えていただけます?」
吉野さんなら全員分頭に入ってそうだと思って聞いたら案の定、「305号室です。お一人で運べますか?」と答えてくれた
「支えれば自分で歩いてはくれてるんで、大丈夫です。ありがとうございます。」
頭だけ下げてエレベーターへ足を向ける
305号室の戸をノックすると早川さんが出てきた
「酒井潰れたの?珍し」
俺に支えられた大也を見てそう零し、体を避けて道を空ける
「相当飲まされてたみたいです。手前の布団でいいですか?」
部屋の造りは俺の部屋と同じで、12畳程の和室に布団が3組敷いてあった
「あぁ、悪いな」
返事を聞いてから大也を布団に下ろす
「たちばなぁまだまだ飲むぞぉ」とほざく大也の顔に枕を押し付ける
「もう寝ろ。杏さんの夢でも見とけ」
「んー杏さぁん…」
押し付けられた枕を抱きしめながら、すぐに寝入った
ふぅと息を吐いて壁にもたれていた早川さんの横を「失礼します」と通り抜ける