ヒトツバタゴ


マンションを見上げると鎮火はされたものの、確かに黒焦げになった私の部屋と燃え移った跡が残る周りの部屋



「そん…な…」



ショックと混乱で力が抜け落ちる体を橘に支えられる




「燃え方から放火の可能性が高いと思いますが、少し署でお話を聴かせていただきたいのですがよろしいですか?」



丁寧に伺いをたてる警察に頷いて答える



「僕も一緒にいいですか?心当たりもあります」



橘が同行を申し出た








移動のパトカーの後部座席でも警察署内でも温かい手が力強く私の手を握っていてくれた




放心状態の私の代わりに橘が昨日から不在だったことを説明し、放火犯の心当たりをあの日の『証拠』と共に提供する




橘が録音していた会話が使われる日がくるなんて…



インターネットで簡単に合鍵を作れてしまう怖い時代



そこに確かに残されていた、私が席を立った時に鞄を漁る音



襲う恐怖に震え出す体




ぎゅっと更に強く手を握られてなんとか落ち着きを取り戻す




「さっき野次馬の中にいたのを見かけました。マンションの監視カメラにも写ってればほぼ黒ですよね?」



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