ヒトツバタゴ


私の決意に「さつきらしいな」とクスクス笑う橘



「昔からどんなに嫌がらせを受けても平然と振舞ってたもんな」



「本当は全然平気じゃなかったのにな」と私の頭に手を乗せる



なんで知ってんのよ



目の奥が熱くなってきて、窓の方に顔を向ける






赤く燃える空が濃い青と混ざり合い窓の外を流れていく








駅のロータリーでタクシーを降りると日曜の夕方ってだけあって人通りも多かった





デパートに入ると自分も買うものがあるからと言う橘と別れ婦人服売場へ向かう




私の部屋は全焼で何も残っていなかった



幸い、化粧品などの日用品は旅行の荷物に入れてたから明日から仕事に行くために買わなきゃいけないのは服くらい



あとは新しい部屋も探さなきゃね



洋服も最近買ってなかったから、今日はパーっと買ってしまおう!




婦人服売場内のショップを順々に入り、傷が隠れ着回しがききそうな服を探し、気に入れば値札も見ずにレジに持って行った




こんなに買い物をするのも初めての経験だ




ただただ無心で服を選ぶ



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