ヒトツバタゴ


売場を一週して両手にいっぱいの服が入った袋達を見て足を止める






全部燃えた…




私が集めた美少女戦士もののグッズも



全部…




1人になってじわじわと押し寄せてきた現実





滲む視界に顔を俯かせる




「さつき」




「ごめん、遅くなった」と私の両手いっぱいの袋達を取り上げる




顔を上げると「買い物終わり?行くよ?」と笑う橘



あぁそうだ



一個だけ火事を免れた物があった





橘が展示会で買ってくれたパスケース




会社に集合だったから、それだけは鞄に入れて持ち歩いてたんだった





歩き出した橘について歩く





それひとつだけあれば充分




私の辛かったことも、傷跡も、オタクなことも全部丸ごと知り尽くしてるこいつがいるじゃない








橘についていって乗り込んだエレベーターで橘が押したボタンはデパートの上にあるホテルのフロントがある階



「さつきの家燃えちゃったから、ホテルとっておいた」



微笑む橘の行動力に唖然としつつ、「ありがと」と絞り出す





「大切な彼女に野宿させられないでしょ」





少し照れ臭いのか顔を逸らした橘が口にした『彼女』という言葉に反応して鼓動が速まる




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