ヒトツバタゴ


食事を終え、歯磨きもして、元のソファで二人してぼーっとテレビを眺め「明日から仕事だし、寝よか」と橘が言ったのを切っ掛けに別々にベッドに入った



なのに、眠れない




夕方に眠ってしまったからか










隣のベッドに橘がいるせいだ




気にしないと念じても、頭の中を無にしようとしても




いつの間にか努力虚しく意識してしまう





なかなか寝付けないのを橘のせいにして、恨めしく私に背を向けて眠る橘の背中を睨み付ける




「さつき」



寝ていると思っていたのに突然名前を呼ばれ、ビクッとなる



「そんなに見つめられたら背中に火が着く」



クスクスと笑いながらシャレにならないことを言ってこちらに向きを変える



目が合うと優しく微笑んだその顔に心臓は動きを速める




「一緒に寝る?…我慢できる自信ないけど」



ベッドに肘を立てて頬杖をつく橘に無言のまま微動だにしない私



我慢できる自信ないって…



そうゆうことよね?





「嘘、さつきが嫌ならしないから、おいで」



苦笑しながらスペースを空けて掛け布団を捲り上げる橘





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