ヒトツバタゴ


鼻歌でも聞こえてきそうな程に上機嫌で契約書を記入していく橘を唖然として見つめるしかできなかった




明日の仕事終わりに入居できるようにしてもらい、店を出てホテルがあるN駅へ向かう






とりあえず明日入居してすぐに暮らし始められるようにと、寝具と日用雑貨などを買って明日の夜に新居に届くように手配して、新しい家での生活に期待を膨らませながら眠りについた







翌日





入居のために早く仕事を終わらせようと必死で仕事を片付けている定時間際




外回りから帰ってきた橘が私のデスクの横を通り過ぎる時に「はい、これ」と鍵を差し出した





何の鍵がわからず首を傾げながら受け取ると、「近く通ったから先に受け取ってきた」と説明を入れる




「ありがと」と返事をしたけれど、ここで渡さなくても…



フロア内にいる全員の注目を浴びる




女性社員の視線が痛いんですけどー




「もう終わる?今日の分の処理して帰るから、先に帰ってて」




にこやかにそう言って自分のデスクに座り仕事を始めた橘を恨めしく睨み、言われた通り帰る準備を始めた





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