ヒトツバタゴ


買ってきた挨拶用のお菓子をキッチンのカウンターに置き、旅行に持っていった鞄の荷を解く



鞄に入り切らなかった物は昨夜のうちに今日の入居の時間指定で届くように宅配に出した





洗面台の棚に化粧水などの基礎化粧品を並べていると、鍵が開けられる音が聞こえた




玄関の方を覗くと、やっぱり橘が帰ってきていて、「おかえり」と声をかける



「ただいま」



極上の笑みでそう返事をしてこちらに近付き、私の額にキスをした




今更ながらに一緒に暮らすということが現実で押し寄せて、恥ずかしさに顔を逸らす



「挨拶用のお菓子買ってきたから荷物届いたら行こ」



恥ずかしさを紛らわすためにそう言った直後にピンポーンとインターホンが鳴った




「ちょうど来たみたいだな」



クスクスと笑いながら橘がドアを開け対応する




宅配業者が帰ってから再び顔を覗かせると、積まれた数個の段ボールとベッドと思われる大きい荷物が玄関を塞いでいた



橘が段ボールを少しずつ部屋の中央へ運んでいたので、それに倣ってひとつずつ運ぶ






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