ヒトツバタゴ


「片付けもあってバタバタだろうから夕飯食べてく?カレーでよければだけど」



杏さんが楽しそうに言ってくれた提案にありがたく乗っかる




まだ完成はしてないらしく、待っている間に橘が大也を連れて玄関に残してきたベッドを移動させに行った




「本当良かったわね」




果奈ちゃんを抱いてダイニングテーブルで向かい合ったまま杏さんが口にする



「はい」と照れ臭いけど、返事をする






「そう言えば、さつきちゃんにお願いがあるんだけど…」



真剣な表情で乗り出してきた杏さんに、こちらも畏まって「はい」と答える




「モデルをやって欲しいの」





そう言った杏さんの話を詳しく聞くと、来月締切のコンテストに応募するために撮りたい写真のイメージが私にピッタリだそうだ




ただ



衣装が胸元の開いたもので、傷跡が見えると…




それも引っ括めて撮りたいと言ってくれる杏さんに即答することはできず、考える時間をもらった






美味しいカレーをご馳走になり、新居に戻ると玄関にあった大きなベッドは寝室となる洋室に設置されていた



1LDKだからベッドはひとつの方がいいと橘に押し切られ選んだダブルサイズのベッド






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