ヒトツバタゴ


見てるだけで、初めて橘に抱かれた夜を思い出して一人恥ずかしくなる





でも今日からは毎日同じベッド




慣れるまでは睡眠不足が続くかもしれない…







そんな心配も杞憂で、橘といると落ち着くらしい私の体は朝までぐっすりと眠る日々を送る







仕事終わりに家具や家電や足りない日用品を買い足したり、片付けをしたりして、週末には橘が一人暮らしをしていた部屋から必要な荷物を運び、不要なものを処分して退居を済ませた





新居も家具や日用品が増え、片付けが終わり生活感も出てきた日曜の午後



真新しいダイニングテーブルに橘と向かい合わせで座り、コーヒーを飲む





まだ杏さんにする返事は決まっていない



ふとした時に思い出してはどうするか考えていたけど、答えは出てこない




「どうかした?ぼーっとしてるけど体調悪い?」



コーヒーのカップを両手で包んだまま止まっていた私の顔を覗き込む橘の声にハッと我に返る



「ううん、なんでもない」



首を振ってカップを口に運ぶ



「そう?」と首を傾げる橘







「ねぇ、橘」





私のことを一番良く知っているこの男に聞いたら答えが出るかもしれない







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