ヒトツバタゴ


撮影は翌週の日曜に行われた




杏さんの車で連れられてきたのは、杏さんが契約している写真館の本社の3階




普段は研修や採用試験などに使われているらしい




店舗ではないので土日は人も少なく、前もって連絡を入れれば使わせてもらえると階段を上りながら教えてくれた






3階には広い部屋がひとつしかなくて、中に入ると奥にレフ板で囲われたスタジオが作られていた




その横に備えられた長机とパイプイスの簡易的なメイク台で撮影用のメイクを施され、髪は丁寧にブローされ、いつもよりサラサラで艶がある






用意されたワンピースを着ると、徐々に緊張が高まってきた




キャミソールタイプで膝丈の無地のワンピースはつるんとしていて、肌触りがいい





「緊張してる?」



カメラを肩から掛けた杏さんにスタジオの真ん中に誘導されながら聞かれ頷く



床に敷かれたワンピースと同じ真っ白でベルベットの大きな布は裸足をとても優しく包み込む




「私も緊張してる」と苦笑する杏さん




「昨日一日ここで練習したんだけど…なかなかね」



杏さん程の腕でもそんなことがあるんだ








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