ヒトツバタゴ
お昼前に終わった撮影の帰り、車の中で杏さんから再度の確認をされた
「もしコンテストに入賞すると写真が公に出るけど大丈夫?」
私が今までひた隠しにしてきたコンプレックス
橘のお陰で、杏さんのモデルをやりたいと思える程にまでなって
今日
実際にカメラを向けられて、たくさんシャッターを切られて
徐々に削られていったように、それは
小さく小さくなっていた
「大丈夫です」
私の言葉に不敵な笑みを見せ、「大賞とるぞぉー!」とアクセルを踏み込む
楽しそうなその横顔に、満足のいく写真が撮れたに違いないとこちらも嬉しくなった
それから2ヶ月程の時が経ち、蝉も歌う夏真っ盛りに私は27歳を迎えた
「かっ…河本さん!!」
誕生日だからと言って特別なことはなくて、いつものように出社すると挨拶する間もなく吉倉さんが今日発売の女性誌を手に駆け寄ってきた
「お…おはよう、どうしたの?」
なかなかの勢いに少し仰け反りながら首を傾げる
「吉倉さん、ここ入口だから席に着こうか」
私の後ろにいた橘に促され、デスクに移動する