ヒトツバタゴ
鞄をデスクの足元に収め、吉倉さんに向き直る
待ってましたと言わんばかりの表情で開いた雑誌を見せる
「これ、河本さんですよね!?」
雑誌の片側のページにでかでかと載っているのは間違いなく私
2ヶ月前に杏さん撮った写真の右上には『大賞』とポップも付いていて、杏さんのあの自信が現実のものなったのだと理解した
「うん、私」
照れ臭いけれど、その綺麗な写真に嬉しくなった
傷跡もしっかりと写っている
でも、それも引っ括めて作品なのだと…
それすら気にならない程に綺麗なのだ
「すごく綺麗ですーー!!」
目を輝かせ見つめられ、思わず苦笑する
「あ、それ俺も朝のテレビで見ましたよ!やっぱり河本さんだったんですね」と安達くん
テレビでまでやってたなんて…
杏さんが言ってた『公に出る』ってそこまでだったのね
でも、嫌な気分はしないのは杏さんが撮ってくれた写真だから
その写真の下に書かれた作品名は
『清廉』
「さすが杏さんは良くわかってるな」
後ろから覗き込んでいた橘がそう零し、自分のデスクに戻っていった