ヒトツバタゴ


ざわざわと1日視線を浴びながら仕事を終え、橘と並びNホテルへ向かう





橘と恋人になって、家が焼けてしまい泊まっていたホテル



随分と前のように感じるけど




まだ2ヶ月しか経っていないのね





橘と暮らす今の生活が馴染み過ぎていて、不思議な感じ








「吉野さんからさつきの誕生日のディナーの手配はこちらでしますって言われたから何事かと思ったけど…そういう事ね」




久しぶりの電車の中、相変わらず壁となり私を守る橘が窓についていない方の手で私が社長から受け取った白い封筒をヒラヒラとさせながら呟く



その表情は不敵な笑みを浮かべていて、何か企んでいるようにも見える










恋人になる前は電車内のこの距離で顔を上げて橘の表情を見るなんてできなかった…




改めて恋人になって距離がもっと近付いたんだと実感し、なんだか恥ずかしくて顔を俯かせる







電車はあっという間にN駅へ滑り込み、週末で人が溢れるホームに降り立つ





橘の温かい手に引かれながら人混みの中、Nホテルのフロント階へ辿り着く






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