ヒトツバタゴ


「あー美味しかった、お腹いっぱい」



デザートを待つ間に放った言葉に、「まだデザートがくるよ」と橘が笑みを零す



「そうね、デザートも楽しみ」



お腹いっぱいでも甘い物はやっぱり別腹よね



橘の言葉に笑って返す





「お待たせ致しました」と運ばれて来たのは、二人では食べ切れないだろうという大きさのホールケーキ



『Happy Birthday』と書かれたチョコのプレートが手前にあり、奥に大きなキャンドルが3本並んでいて、灯りを揺らしている




呆気に取られている私に、橘が「早く火消さないと」と促す




慌てて息を吹いて火を消すと、キャンドルとチョコプレートの間に施された綺麗な装飾の中に一際光るものを見つけた





その光り輝くものを凝視していると、橘の手が伸びてきてそれを取り上げる




もう片方の手で私の左手を持ち上げ、薬指にそれを通す






大粒でキラキラと光を反射して私の左手の薬指で輝く石に釘付けになる





これは…




もしや…









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