ヒトツバタゴ
昼休憩に入ったばかりということもあり、出退社時間前後に比べると人は疎ら
私が使っていたロッカーも相変わらずボコボコに歪んだまま
それを一瞥し、辺りを見渡す
吉倉さんのロッカーはすぐに見つけられた
ロッカーの前に二人立っていて、コソコソと何やら話しながら手を動かしている
静かに近付けば、話し声も聞こえてきた
「これもやっちゃう?」「うんうん、やっちゃおう」「こんな感じ?」…
「ちょっと足りないんじゃない?」
背後から声をかけると、慌てて振り返る二人
私が手にしているスマホが先程の会話も私の顔を確認して絶句する二人の顔も、可愛い後輩にしていた仕打ちも全てを記録する
「4年前から何も成長してないんですね」
私の時と変わらないやり方に、「可哀想に...」と言葉を発することも出来ずにいる2人を見遣る
私より1年早い入社の先輩方だから4年前は何も言わずにやり過ごした
けど、私の大事な後輩を傷付けるのは許さない
「なっなによ彼女でもないくせに、図々しく近付いて迷惑だと思わないの!?」
1人が顔を真っ赤にして怒鳴る