ヒトツバタゴ
ガタッと女2人がロッカーに背をつけた音が鳴る
自慢のお洋服にも、ふんわりと可愛く仕上げた髪にも洗剤がついたであろう
私は口角を上げ彼女たちから少し距離をとる
「橘の彼女は私よ」
昨日からだけど
嘘じゃない
「吉倉さんじゃなくて、私を綺麗にしてくれる?」
微笑みを貼り付けて首を傾げる
「もっとも、私があなた達より汚いと思うのなら...ですけど」
悔しさを顔に滲ませ、唇を噛み締める2人に背を向け歩き出す
成り行きを不安そうに見守っていた吉倉さんに行きましょと声をかけ出口に向かう
いつの間にかロッカールームに人が増えていたことに内心焦りながらも、颯爽とその場を後にする
エレベーターに乗り込むと吉倉さんからお礼を言われた
「私の大事な後輩を守りたかっただけよ」と苦笑する
大事なものを守るためなら使えるものはフル活用する...
そんなところは橘に似ているかもしれない
エレベーターで食堂へ行き、先に食べていた橘と大也と合流する