ヒトツバタゴ
居酒屋に入ると当然だが席に案内され、座ることとなる
「堀内さん、助けていただいてありがとうございます」
一度だけ会ったことがあるが電話では何度か話しているその人に礼を述べる
仕事で会った時に貰った名刺に書かれた名前は確か堀内貴雄(ほりうちたかお)だったはず…
「いえ、たまたま通りがかって良かったです。駅から出たら河本さんが絡まれてたのでビックリしましたよ」
ニッコリと微笑むその顔は愛嬌があり思わずこちらも釣られて微笑んでしまう
訂正されなかったので名前は合っているのだろうと安堵する
「せっかくなんでご飯食べていきません?今出てってもまだいるかもしれないですし」
確かにお腹も減ったし、今から帰って作る気も起きないし、外に出てってまた絡まれるのも面倒なので彼の提案に乗る
生ビールと適当な肴を注文し、ゆっくりと世間話をしながら飲む
2時間ほど居座り、お腹も満たされお酒も程よく回ったところで席を立つ
堀内さんが伝票を手にしたのを慌てて奪う
「今日のお礼に払わせてください」
「女性に払わせるなんてできませんよ」
と困った顔をして私から伝票を取り戻す
「ここは僕が払いますので、良かったらまた飯に誘わせてください」
そう言ってレジへ行きお会計を済ませてしまった