ヒトツバタゴ


搭乗を知らせるアナウンスに橘と同時に動き出す


なによ飛行機まで同じなの?



「さつきもこの便?」


橘の問に頷き歩を進める









「はぁ…」


もうため息しか出ない


真ん中らへんの列の窓際に座る私とその隣に橘…



別々にチケットを取ったのに席まで隣だなんて



神様は意地悪だ






席に座ってシートベルトをしてすぐに窓の方にもたれかかり寝た振りをしていたら、いつの間にか本当に眠っていた




懐かしい夢を見た






春がくるのが遅い地元では高校の入学式の時でも桜は咲いているどころか蕾すら膨らんでいない


まだ冷える日が続き、制服のブレザーの下に定番のカーディガンを着てブレザーの袖からカーディガンの袖を出して外の冷たい空気に冷える手をカーディガンの中に隠していた




昇降口の入口に張り出されたクラス分けの表を確認して靴を履き替えて教室へ行った



古くなった校舎の廊下は冷える


カーディガンの袖の中に隠しているはずの手が更に冷たくなっていく


3階建て校舎の3階の一番奥の教室に着く頃にはしっかり悴んで動きの悪くなってしまった手で教室の後ろの戸をガラガラと開けた


ざわついていた教室内が一瞬静まり、入ってきたクラスメイトである私の姿を確認し再びざわざわとする




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