ヒトツバタゴ
「さつき、降りるよ」と起こされいつの間にか眠っていたんだと窓にもたれていた体を起こす
…ん?
なぜか左手が橘の右手に繋がれている
寝惚けた頭で状況を理解すべく、しっかりと握られている左手を凝視する
温かい…
だから高校の入学式の日の夢だったのか…
いやいや違うでしょう脳みそよ…そこじゃない
「さつきから繋いできたんだよ?」
そう言って私のシートベルトを左手ではずす
え?私から?
寝ながら橘の手を握ったの?
なんだか急に恥ずかしくなり、入学式の日のように手を引っ込めようとしたけど、更に強く力を入れて握る橘に阻止される
「窓側で寒かった?温まっておきなよ」
言いながら立ち上がり自分の分と私の分の荷物を左手で上から取り出しそのまま持って歩き出す
橘の右手に引っ張られ立ち上がり、後を追うように歩く
機内に残ってた客は私達だけだったようで満席だった座席はガランとしていた
まだ覚醒し切らない頭と体は引かれる手に従い橘を追いかけ、空港を抜け札幌まで直通の電車の改札へ向かう
改札前でようやく解放された左手はポカポカでいつも冷たい私の手じゃないみたい
鞄を受け取り、事前に取っておいた切符を鞄のポケットから取り出し改札を通ると先に通っていた橘がこちらを振り返り左手を出している
「なに?」と言いながら元のポケットに切符を仕舞い首を傾げる