ヒトツバタゴ


札幌に着くまで握られていた手はポカポカな状態で解放された


札幌からは地下鉄に乗り換えだけど、お互いの実家は同じ路線上で一駅しか違わないので結局橘と共に乗り換えをする






実家に着くと玄関でもうすぐ3歳になる甥っ子に熱烈歓迎され、その可愛さにぎゅーっと抱き締めた





その日の夕飯は娘の帰省に張り切ったお母さんが私の好きな食べ物でテーブルを埋めた



久しぶりに兄と遅くまでお酒を飲み、2階の自室の布団に入る


思い出す手の温もりになかなか寝付けずに布団の中で無駄に寝返りを繰り返した




目が覚めると既にお昼で、1階に下りていくとリビングのソファで寝ている甥っ子とその横でテレビを見ていた母親である兄の奥さんの香澄さん



他に誰もいないことに、今日が暦の上では平日だったと思い出す


父は定年まであと3年、母はパート、兄は市役所に勤めて10年目




ダイニングのテーブルにラップをかけられた私の分の朝食と思われるサンドイッチがあり、少しパンが乾いているようだけど、昼食に食べようと思い、キッチンでなるべく音を立てないようにコーヒーをいれていると香澄さんがそぉっとやってきた



「おはようございます」と小声で挨拶をする


「おはよう、私の分もお願いしてもいい?」


と、食器棚からカップを取り出し私のカップの隣に置く


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