ヒトツバタゴ


店を出て、家の方向は違うみたいだったのでその場で解散する

「じゃあ、また。気をつけてね」と手を挙げ歩き始めた彼に背を向け私も家路を行く




しつこいナンパに困ってた私をどこぞの美少女戦士もののアニメのピンチを救ってくれるヒーローのように助けてくれた堀内さん


だけど


彼の言う『また』はきっと建前だと思う




だって連絡先すら知らないもの






駅から徒歩5分のオートロックの7階建のワンルームマンション


通っていた大学も近く、入学した時から住んでるからかれこれ8年


在学時は親からの仕送りとバイトで家賃と水道光熱費とその他生活費を賄っていたけど、社会人になってからは全て自分で賄っている


オートロック付きマンションはやっぱり家賃は高めだけど、遠く離れた親がそれで安心できるなら安いもんよね



その両親も私が25歳を過ぎてから、やたらと地元の同級生の誰々が結婚しただの子ども産んだだの話してくる


早く結婚してほしいのはわかるけど、正直ウンザリしている



5歳上の兄が3年前に結婚して翌年に子どもが生まれているんだから、孫の相手してればいいのに




住み慣れた自宅のドアを開ける


玄関からすぐに4帖ほどのキッチンがありトイレとお風呂が左手にセパレートで付いてて、キッチンの奥のもう1枚扉の向こうに8帖の洋室とクローゼットがある




荷物を床に置いてベッドを背にそのまま床に座り込む



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