ヒトツバタゴ
許可証を受け取り、首からかけていると隣の職員室の戸がガラガラと開き武田先生が出てきた
「あっ武ちゃん!」
橘の声に顔をこちらに向けた武田先生は相変わらず日に焼けて真っ黒だった
「おおー!橘に河本、久しぶりだな」
笑顔になった武田先生の顔は8年の歳月に多少シワが増えたものの、あの頃と変わらず優しくて懐かしい
「武ちゃんよく名前覚えてるねー」
「お前らは大也と仲良かったし、我が校きっての美男美女だからなぁ」
はっはっはーと笑う武田先生に苦笑するしかない
「んで、夫婦になったのか?」
夫婦!?
いやいやそもそも恋人でもないですからー!
冗談なのか本気で言っているのかわからないけど、笑顔で私と橘を交互に見る武田先生に「友達です」と即答する私と肩をすくめて見せる橘
「なんだ昔から仲良かったから結婚でもしてるかと思ったのに…」
武田先生の言葉にはははと空笑いをする
仲は良かったかもしれないが友達としてなのに…
「今日は大也も綺麗な嫁さんと子ども連れて来てるぞ。もう部活始まるからグランドにいるだろ」
「杏さんも来てるんですね」
まさかこんな所で杏さんに会えるとは…
「知り合いか?暇だろうから話し相手にでもしてやれよ。俺も部活行ってくるな」と手を振り去っていった武田先生