ヒトツバタゴ
突然出てきた橘の名前にドクンと心臓が大きく跳ねる
「橘はバレー部だったんで、体育館に顔出してからこっちにくるそうです」
ここからは見えない体育館の方角を指で示しながら答える
「バレー部だったのね、背高いしイケメンだしカッコよさそうよね」
杏さんの言葉に当時の橘を思い出す
実際にプレーしてる橘を見たことはないからわからないけど、毎日のように体育館に女子が見に行っていたのは覚えてる
そんな女子達に自分が妬まれていたのも知っている
「その様子だとまだ答えは出てないようね」
答え…?
杏さんの意図することがわからず首を傾げると、後ろから声をかけられた
「あの…」
杏さんと同時に振り返ると、制服を着た女子生徒が3人モジモジと立っていた
「日下杏さんですよね?ファンなんです!握手してください!」
真ん中の子が顔を真っ赤に言ったセリフにキョトンとした表情の杏さん
彼女達の肩からカメラが掛かっているから写真部の子達かな?
フリーで活動し始めてからいくつかコンテスト入賞もしてる杏さんにファンがいてもおかしくない
「写真部の子?」
杏さんから反応がないので彼女達に助け舟を出す
「はい!そうです」
右側の子が答えると杏さんはパァっと顔を明るくさせ立ち上がり握手をしていく