ヒトツバタゴ
「写真部があるのね!楽しそう」
杏さんに握手をしてもらいはにかみながら「良かったら部室に来てください」と誘う右側の子はしっかりしてるなぁと感心した
「果奈ちゃん見てるんで行ってきてください」
私の言葉に嬉しそうに頷き、「果奈が愚図ったら鞄の中の煎餅与えてくれれば大丈夫だから!」と言い残して写真部の生徒達と校舎内へ消えていった
カメラのことになると少年のようになる杏さんは可愛い
きっと高校生相手に熱く語ってくるに違いない
その姿を想像して、ふふっと笑いを零す
またしても聞くことが出来なかった『答え』
どこかに落ちてないかしら…
果奈ちゃんが反対側に倒れたら危ないので膝の上に乗せて、その小さな手を動かして遊びながらグランドを眺めていると後ろの方からキャーキャーと黄色い声が聞こえた
この感じも懐かしい
当時から橘が1人で歩けば発生し、段々とそれは近付いてきて…止む
それは橘が私の隣に来た合図のように
「あれ?さつき子ども産んだの?」
杏さんが座っていた所と反対側のアスファルトに腰をおろし、私が膝に抱く果奈ちゃんを見て言う