ヒトツバタゴ
「そう、今7ヵ月なの。可愛いでしょう?」
橘も当然果奈ちゃんのことは知ってるので、橘の冗談に付き合う
「俺の子?」
「ううん、あそこでボール持って走ってる男の子ども」
ボールを脇に抱え颯爽と駆ける大也を橘も見る
「「ぷっあはははは」」
同時に吹き出して笑う2人にキョトンとする果奈ちゃん
橘が言った『俺の子?』という言葉が胸の奥につっかえる
いつか橘も誰かと結婚して父親になるのだろう
それはなんだか想像つかないけれど、モヤモヤとしたものが心の中で渦巻いた
「日下さんは写真部に連れてかれた?中庭で女子高生と桜撮ってたよ」
橘に頷く
撮影まで披露してるなんてサービス精神旺盛よね
「橘ー!河本ー!」
休憩に入ったらしい大也が寄ってきた
近付いてきた父親にキャッキャと嬉しそうに手を動かす果奈ちゃんを私の膝からひょいと抱き上げ頬を緩ます
「橘と河本も帰ってきてたんだな」
と言う大也のすっかり親バカな姿に少し羨ましく思う
鞄の中からスポーツドリンクを取り出して一口飲んで「杏さんは?」と辺りを見回す
「写真部に攫われてったわよ」