ヒトツバタゴ
私の言葉に嬉しそうに微笑み、再びドリンクを口にする大也
大也はカメラ馬鹿な杏さんも丸ごと愛している
自分の好きなものを否定されずに愛してもらえる喜びを私は知らない
好きなものも…醜い傷跡も…見せたくない
「ただいまー」
ご機嫌で帰ってきた杏さんに橘が「こんにちは」と挨拶をする
「あら、イケメン発見!」
元の位置に座り、橘にカメラを向け1度シャッターを押し、画面を確認して設定を軽く弄り、もう一度橘にカメラを向け再びシャッターを押す
画面を見て満足そうに頷き、座っていた場所を空けそこに座るよう私に手招きをする
指示された場所に座る位置をずらすと杏さんが今撮ってたカメラが橘にレンズを向けた状態で顔の前に差し出される
「ここで持って覗き込んで」と言われるままにカメラを受け取り覗き込むと先程から微動だにせず微笑み続ける橘の顔
サービス精神旺盛だこと…
「真ん中の小さな四角を橘さんの目に合わせてシャッターを半押しするとピピって音がするから、そのままフレームの中に胸から上が入るように動かしてシャッターを押し込むのよ」
言われた通りに真ん中の四角を橘の目に合わせて右手の人差し指でシャッターを軽く押さえるとピピっと音がした