ヒトツバタゴ
コンビニの袋が指にくい込み痛い
「あっいたいた!」
香澄さんが兄を発見して指で示す方を見て私は固まった
目に入ったのは満開の大きな桜の木の下で大きなシートを広げその上に座り場所取りしている兄の隣に同じく大きなシートを広げ兄と並んで座り楽しそうに話している橘の姿
「あらまぁ」と意味深な視線を私に向ける香澄さんと「あら?橘くんじゃない」と言う母
母は高校の時に橘に会ったことがあるから橘のことを知ってるだろうけど、面識のないはずの兄が橘と楽しそうに話している意味がわからない…
兄が私達に気付き「おーい」と手を振るとこちらを見た橘と目が合った
あ…驚いてる
目を見開いて驚いていたのは一瞬ですぐに立ち上がり靴を履いて私の家族に挨拶をしながら通り過ぎ、固まっていた私の目の前に来て千切れそうだった私の手から大量のビールが入った袋を奪う
「おはよう」といつもの爽やかな挨拶をされドキドキと速くなってきた鼓動を何とか抑え込み同じ言葉を返した
「場所取りしてたら話しかけられて話し込んじゃったけど、さつきのお兄さん?」
橘に促されシートが敷かれた方へ歩き出す
誰にでも気安く話しかける兄が恥ずかしくて「うん」と小さく答える