ヒトツバタゴ
シートまで辿り着くと、今度は母が橘に喋りかける
「橘くん久しぶりね、相変わらずいい男ねぇ。いつもさつきがお世話になってごめんねぇ」
しっかりと近所のおばちゃんのノリだよお母さん…と口に出して言うと怒られるので心の中でツッコミを入れる
「いえ、僕の方こそいつも助けられてますよ」
と返す橘は本当にできた男ね
助けられるのはいつも私なのに…
「さつきの彼氏?」と言う兄と呆然としている父
「友達よ」
橘のことが好きだと気付いたって友達という関係を変えられるはずもない
今の関係が変わってしまうのが怖い
私の気持ちを橘が知れば友達ではいられない
橘の傍にいられるなら友達でいい
「橘幸太郎です」と自己紹介をした橘はすっかり私の家族と馴染み談笑している
いつの間にか健までも懐き、兄と橘の間に座っている
お弁当のお重とビールを広げていると、橘の家族も到着し、結局一緒にお花見をしようということになった
橘の家族には初めて会う
優しそうなお母さんと陽気なお父さん、話には聞いたことがある4歳下の弟
美容師をしている橘の弟は橘が言っていた通りチャラい…
顔は兄に似ているけど、金に近い茶色の髪は長めで後ろで一つに括られている