ヒトツバタゴ


無言で並んで歩き、さつきの家の玄関前で「また明日な」と声をかける


「橘…ありがとう。また明日」


さつきがドアの向こうに消えたのを見送って踵を返すとちょうど帰ってきたさつきのお母さんとぶつかりそうになって慌てて体を避けた



「あらイケメン」


俺の顔を見てそう言ったさつきのお母さんに条件反射で微笑み挨拶をする


「こんにちは」


「こんにちは、さつきに用事?」


首を傾げるお母さんに名を名乗り、今日の出来事を説明する


さつきは人には知られたくないかもしれないが、この優しそうなお母さんなら悪いようにはしないだろうと思ってのこと




話を聞き終わり「ありがとう」と微笑んでいたお母さんがその日どのようにさつきと接したのかは知らないが、翌日会ったさつきはいつものように凛と微笑んでいた








さつきと大也と俺の3人で高校生活を楽しく過ごし、友人の地位を確立してしまっていて今更男として見てくれとも言えずに高校の卒業式の日にはお互いに進学先を内緒にしたまま3人で「またいつか会おう」なんて言って3人でカッコつけて別れた




まさか



また一緒に過ごす日々が続くなんて



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