ヒトツバタゴ


高校の時から当たり前のように隣にいた


けど、私は知ってる


私が横にいれば付き合ってると思わせることができて、いらぬ告白が減るということ


実際、高校に入って橘が隣に来るようになってからは私に対する告白も減った


たまに勇気ある猛者もいたけど…お互いに断る時の理由に便利な友人を使っていた





橘も大学の時から一人暮らししているアパートに住み続けていて、私の家から徒歩3分と家まで近い



「そういえば、昨日向井商事の堀内さんとご飯ご一緒したわよ」



向井商事は橘が担当する顧客で堀内さんはそこの担当者


営業事務の私は一度だけ橘に同行して挨拶と交渉記録をとったことがある



「堀内さん?なんで?」



ホームに入ってきた既にギュウギュウ詰めの電車に他の乗客と共に無理矢理乗り込む


毎朝のこの満員電車にもため息しか出ない


会社の近くに引っ越そうかなぁ…





ドアを背にもたれかかる私の正面で橘がドアに手をついて押し合い圧し合いしている乗客から私を隔離する




これも毎朝の光景



学生時代にバレーボールで鍛えた体は多少押されたところでビクともしないらしい




< 6 / 178 >

この作品をシェア

pagetop