ヒトツバタゴ


駅に着くとちょうど電車が行ってしまった後で、10分待たされる羽目になる



さつき達が店を出る前に近くまで行っておきたかったのにツイてない


あちらは既に食後のデザートを食べ始めているようだ




やっと来た電車に乗り込みドアの近くに立つ




そろそろ出ようかという話に焦りドアのガラスについていた手の指でガラスをトントンと打つ



店から出た駅前の通りの騒がしい音が一瞬聞こえ遠ざかる



路地に入った?



いつも前を通り過ぎる居酒屋の横にある細く薄暗い路地が思い浮かぶ





静寂の後に聞こえた「ごめんなさい」というさつきの言葉



拒否の言葉に思わず笑みが零れる



出会ったばかりの男に体を許せる女ではない


一番さつきに近いと思う俺だって10年手を出さずにいるんだ




しかしその後に聞こえた言葉に思わずドアのガラスに拳を打ち付ける





無理矢理行為に及ぼうとする男と嫌がるさつきに新たな声が聞こえる




そして聞こえたさつきの傷を抉る言葉



「うわ…」「気持ち悪っ」



唇を噛み締め怒りに震える手をもう片方の手で押さえる



落ち着け、俺





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