ヒトツバタゴ


駅に着き急いで改札を抜けながらイヤホンを外しズボンのポケットに仕舞う





さつきが今襲われているだろう路地に入る




「さつき!」




ブラウスの前ははだけ傷跡が露わになり、スカートの中に手を入れられているさつきは唇を噛み締め恐怖に怯える瞳から涙を流していた





落ち着け



心の中で呪文のように繰り返す





「堀内さん、警察の世話になりたくなければ金輪際さつきに関わらないことと今見たことは他言無用とすることをお約束ください。」


俺の登場にさつきから離れた男に極上の笑顔を向けてやる




「警察?俺が彼女を襲ったとでも?」



とぼけても無駄だよ。全部残ってんだ


さつきに近付き落ちていた鞄を拾い上げポケットから仕事用のスマホを取り出して画面を見せるように持ち、胸ポケットから自分のスマホを取り出して見せる



本当、電池が切れる前に動いてくれて良かったわ




「おたくとの契約もなくなるかもな」と消えていった男に困るのはそちらですけどねと心の中で答え、さつきに向き直る



「さつき」



10年前にもあったなこんなこと…なんて思い出しながらジャケットをさつきに掛ける




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