ヒトツバタゴ
また近いと抗議されるかと思ったけど、意外にも何も言われることなく電車を降りる
まさか気付いてないということはないだろうし、あの近さでも受け入れられるのに未だ友達ポジションの俺って…
心の中で項垂れながら翌日からも続けてみようと決め数日を過ごす
年度末で忙しくてもデスクに座っている時に正面に座るさつきを真っ直ぐに見つめることも癖になってきた
最初は目が合うと眉を顰め睨んできてたけど、最近ではすぐに目を逸らし戸惑いの表情を見せる
んーいい傾向だ
もっと俺のことを意識してくれ
そして男として見てくれ
4月の中旬の土曜日の午前に大也から電話が入った
『今日暇だろ?昼飯付き合って』
こういう時は大抵、奥さんの杏さんが子どもも連れて出掛ける時
特に予定もなかったので12時に会社の最寄り駅近くのファミレスで待ち合わす
「お待たせ」
と言ってやってきた大也は安定のジャージ姿
杏さんと出掛ける時はちゃんとした私服とは言っていたが、俺は大学の頃からスウェットかジャージしか見てない…あ、会社ではスーツか
「今日の夜は吉野さんの美味しい料理が食べられるから、昼はファミレスで我慢しますか」
大也の言葉に今日がさつきと杏さんと佳香さんの女子会なのだと知る