ヒトツバタゴ


「昨日駅から出た所でしつこいナンパにあってたところを助けてくれて、そのまま居酒屋でご飯食べたのよ」


顔を上げると目の前に橘の顔があるのが分かっているので、敢えて橘の紺のつるっとしたネクタイの胸で光るネクタイピンを見つめて話す



「へぇ、さつきが好きそうなシチュエーションだな」


私の美少女戦士もの好きを知ってる橘は私を見下ろし笑っている


「そういうのが好きで悪かったわね」


素直じゃない私はそっぽを向く








会社の最寄り駅で電車から吐き出され人の波に乗って並んで歩く



「橘ー河本ーおはよ」


会社の入口の手前でもう1人の高校からの腐れ縁の同期、酒井大也(さかいだいや)が反対側から現れた


橘の親友である大也は高校の時からラグビーをやっていて大学の時にスカウトされ、ラグビー部としてこの高梨グループに入社した


入社して1年目のワールドカップでの活躍以降、テレビやCMでもよく見かける



オフシーズンとか遠征がない時は午前中だけマーケティング企画部で働いて午後からラグビー部専用のグランドで練習している


図体はデカいのに甘え顔でやたらと女にモテていたけど、3年前に5年間の片想いを実らせ2年前に結婚して昨年子どもも生まれてすっかり親バカ





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