ヒトツバタゴ
到着してさつきを起こすと寝惚けた顔で繋がれた手を凝視している
「さつきから繋いできたんだよ?」
嘘だけど
握り返してきたのは間違いないからそういうことにしてさつきのシートベルトを外してやる
初めて出会った時のように手を引っ込めようとするさつきの手を強く握り立ち上がり二人分の荷物を左手に持つ
「窓側で寒かった?温まっておきなよ」
折角繋がった手を離すわけないだろ?
さつきの手を引いて電車の駅へ向かって歩く
これが日常になればいいのに…
改札は手を繋いだままは通れないので、名残惜しいけれどさつきの手を離し鞄を渡す
先に改札を通り、さつきを振り返り今度は左手を差し出す
切符をしまいながら「なに?」と首を傾げるさつき
素直に手を出すわけないか
窓側で冷えていたさつきの右手を捕まえ歩き出す
「左手は温まっただろ?今度は右手」とそれらしい理由もつけて振り払われないようにする
ホームでさつきに席の確認をする
本当は俺の隣ってわかってるけど、聞かずにそこに行けば怪しまれるしね
それでもさつきの切符を見てやっぱり隣だと思うと込み上げる笑いを抑えきれなかったけど