ヒトツバタゴ
当然のように隣に座った俺の切符を確認し眉を顰めて窓の外を見て何か考えているようだけど、離されることなく繋がれたままの手に勝手に幸せに浸る
札幌に着く頃には俺と同じ温度になってしまったさつきの右手を仕方なく解放して、地下鉄に乗り換え実家に帰った
最近は大型連休の度に帰ってきているからか、さして歓迎もされず普通の対応をされる
これが孫でも連れての帰省なら毎回歓迎されるんだろうな
さつきとさつきとの子どもと帰省する…随分と気が早い妄想だ
翌日は朝から暇を持て余した
さつきのように相手をしてくれる甥っ子もいないし、美容師をしている弟は相変わらず遊び歩いている
あまりにも暇だから散歩がてら久しぶりに高校でも行こうと思い立ったのがお昼過ぎ
どうせならさつきも連れていこうとさつきの実家に寄る
インターホンをしてから、連絡せずに来たからいないかも…と気付く
「はーい」と出てきた小柄な可愛らしい女性と小さな男の子に、これがさつきがメロメロになっている甥っ子かと心の中で大人気なくライバル心を燃やす
「こんにちは、橘と申しますがさつきさんはいらっしゃいますか?」と初対面なので丁寧に伺う