ヒトツバタゴ
タイミングよく職員室から出てきた高校3年の時の担任の武ちゃんにテンションも上がる
「夫婦になったのか?」と聞く武ちゃんに「友達です」と即答するさつきに思わず肩を竦める
俺はなれるならすぐにでも夫婦になりたいですけどね
武ちゃんから杏さんも来ていると聞いて嬉しそうにするさつきと体育館に顔を出してからグランドに行くからと別れ、懐かしい体育館へ向かう
「あら橘くんじゃない」
げっ
体育館に行く途中の渡り廊下で会いたくない女に出会した
「誰?」
本当は覚えてるけど、記憶にない振りをする
「やだ、2年の時に同じクラスだった藤川よぉ。覚えてないの?」
覚えてる
その甘ったるい喋り方も、濃い化粧もしっかりと記憶にある
「あぁそうだ、藤川さん」
3年間しつこくアプローチされたことも覚えてる
そして、俺の傍にいたさつきを目の敵にしていたことも
「私今はここで教師をしているの。橘くんに再開できるなんて嬉しいわ」
俺はちっとも嬉しくない
「ごめんね、さつきを待たせてるから小林先生に挨拶して早く行かないと」
話を弾ませようと近付いてきた女の横を持っていたコンビニの袋を見せて通り抜ける
さつきが待ってるというのは嘘だけど…
きっと杏さんに会えて楽しんでいるに違いない