ヒトツバタゴ
なんとか女から逃れ体育館に入ると、俺を確認した小林先生が「挨拶」とバレー部員に言い放つとパス練習をしていた彼らから一斉に「こんにちはー!」と挨拶をされ、変わらない光景に笑顔で頭を下げた
体育館の隅でパイプ椅子に脚を組んで座っている先生の元へ歩み寄ると「よぉ、久しぶりだな」と声を掛けられた
「お久しぶりです。変わらないですね」
先生の姿も、座る場所も…
「そうか?橘がいなくなってから女子が見にこなくなったくらいか」
たまに冗談を言って1人でガハハと笑う姿も…
「今日は1人か?」
「今日はさつき…河本と来たんです」
俺の返事に「あぁあの綺麗な子か」と言っている
「結婚したのか?」
ここでも聞かれるこの話題に思わず苦笑する
「結婚したいのは山々なんですけど、未だ友達のようです」
本人がいないので、正直に答える
「お前が苦戦するとはねぇ…」
クスクスと笑いながら顎に蓄えられた髭を触っている仕草も昔から変わらない
「少し打ってけよ」
スパイクを打ってけってことだけど、今日はジャージじゃないしシューズもないしと言うとお前ならどんな格好でも打てるだろと言われ断れなかった