ヒトツバタゴ


とりあえず手に持っていた差し入れの袋を先生に手渡して、怪我をしてはいけないので座っている先生の横で念入りに準備体操とストレッチをする


部員達のパス練習が終わると集合をかけ、「これ貰ったから挨拶」と俺が渡した袋を掲げ、足元へ置く


後輩達の「ありがとうございます!」という元気の良い声が体育館に響く



「シートの前にスパイク。こいつは9年前の卒業生で、道大会準優勝の時のエースだからよく見とけよ」


シートとは守備の練習で、強打だけでなくフェイントやワンタッチなども織り交ぜて飛んでくるボールを綺麗にセッターに返しつつフォーメーションも確認していく練習で、いつもパス練習とスパイク練習の間に行われている


9年前の卒業生なんて見本になる動きできませんよ…


バレーボールなんて大学の授業でちょこっとやって、社会人になってからは毎年の会社の懇親旅行でのレクリエーションくらいだし…



俺の心の叫び虚しく、スパイク練習が始まった


列の1番後に並び、自分の番が来るまでにボールを床に打ち付けて少しでも感覚を取り戻す



一球目は様子見でトスを高く上げてもらうオープントスを要求した


綺麗な弧を描き上げられたボールに合わせて踏み切り、跳んで腕を引いてクロスへ打ち込む



おぉ、俺まだまだいけるじゃん



心の中で自画自賛して自分でボールを拾いに行く


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