ヒトツバタゴ
大也に目をやると相変わらずラグビーが好きで好きで仕方ないって顔をして楽しそうに走っている
うーん…さつきと大也の子どもは嫌だなぁ
嬉しくない妄想をして、さつきと同時に大笑いしてそれを吹き飛ばす
休憩に入った愛娘と戯れる大也と話していると、中庭にいた杏さんが「ただいまー」と帰ってきて俺と反対側のさつきの隣に座る
「あら、イケメン発見!」と俺にカメラを向けシャッターを押す
3年に会社のホームページ用の撮影の時にも思ったけど、彼女に撮られるのは心地がいい
杏さん自身が意識しているのかはわからないけど、呼吸を合わせてくれているような…瞬きなどの生理現象のタイミングを知り尽くされてるような不思議な感覚
撮れた画像を確認して設定を弄り再びカメラをこちらに向けシャッターを押す
満足気に頷くと、さつきにカメラを持たせ撮り方をレクチャーしている
レンズが俺に向けられたままということは、さつきが俺を撮るということか…
『写真には撮った人の感情が出る』と前に杏さんは言っていた
その言葉通り、3年前のホームページ用の撮影で杏さんが撮った大也の写真は見ているこっちが恥ずかしくなる程に彼女の気持ちが溢れていた
杏さんが撮った俺とさつきが撮った俺…見比べたい、さつきの本当の気持ちを知りたいという欲望が湧き上がる